この頁では、クローゼット・収納庫に関して、その考え方や具体的な設計手法をご紹介致します。
住まい造り中で、ご家族の成長に合わせて変化が必要な住まい造りの貴重なアイテムです。オシャレが楽しくなる、余裕のクローゼット・収納を心がけます。
1.暮らしの大切なパートナー?クローゼット・収納
1945年8月15日に日本は終戦を迎えました。それから復興を旗印に高度成長期を迎え、人々の暮らしは次第に物が豊かになり始め、住まいの中で物が占める割合は大きくなり、白物家電や衣類が増える事は、ある面で人々の暮らしの豊かさの象徴となりました。
ところが、住まい造りの現状を振り返ると、有料のトランクルームがテレビ広告を打ち出し、大人気となりトランクルームの市場は拡大傾向を辿っています。
国内最大手のレンタルスペースを提供されるキュラーズ様の2017年発表では、『延べ37万室を超えた』との事です。
つまり少なくとも37万世帯の方々は、住まいに収納出来ないほどに、物が溢れて暮らしている事になります。
この事は、見方を変えると、何らかの理由から国内の住まいの収納量が不足している可能性がある事となりますが、以下、マンションと戸建住宅を例に検証してみます。
▼下記図面はマンションの間取り図です。クローゼット・収納は充分でしょうか?
この間取は各部屋にクローゼットがありますがこの大きさで楽しくオシャレできそうでしょうか?
最低限、床面積の10%は必要とされる収納。床面積60㎡だと、6㎡となりますのでクローゼット長さに換算して奥行60cmで10m程の長さが必要となります。
この間取では、LDKに収納は無く、恐らく玄関ホールの小さな収納庫に仕舞い、都度、扉を開閉して掃除機を打仕入して掃除する事になってしまいます。
▼この間取りも収納庫が少なすぎます。
この間取りも仕方なく市販のワードロープを購入し置くしかありません。
▼それでは、戸建住宅はどのような実態でしょうか?
昔からよく言われる戸建住宅の最低目安面積の30坪(100㎡)規模ですが、マンションと比較して少し余裕がありますが、オシャレな方には物足りないでしょう。
男性も、オシャレな方が増える傾向ですが、残念なことに、肝心なクローゼット収納が少ないマンションや戸建住宅が多い事か!
家族が成長し、物が増え暮らしが豊かになる事と反対に、明らかにクローゼット・収納のスペースは少なく・狭い、住まい造りの実態が住まいの供給側(マンション販売会社・開発デベロパー・建売分譲会社)に有る事が、レンタルルームの市場を拡大する要因となっているのです。
2.クローゼット収納の種類と特徴、注意点
1)クローゼットの種類
種類としては以下の①シューズインクローゼット、②ウォークインクローゼット、③クローゼットの3種類となります。
①シューズインクローゼット
②ウォークインクローゼット
③クローゼット
2)クローゼットの種類毎の特徴と注意点・工夫
①シューズインクローゼット
【特 徴】
靴を履いたまま出入する、靴の収納や他の物を含めて、ご家族の共有の物入です。
【注意点】
■靴等を履いたまま出入りし玄関先に靴を脱いだままにしない事が基本です。出入口が1カ所の設計を見かけますが、サンダル等が玄関に脱ぎっ放しになりますので、出入口は2か所設置が必要となります。
■臭気予防の為に、内部には窓等の開口部と換気扇をつける事をお薦めします。
■臭気等が気になる方は、室内の仕上材を調湿・消臭機能が有る物を選ぶ事も必要です。
■広さによっては、ゴルフクラブや自転車などを収納する方々もあり、何をどのように収納されたいのか、熟考が必要です。
■出入口扉は、扉操作の開閉域が狭い折戸か引戸がお薦めです。但し引戸の場合は、内部に棚板やメッシュ棚等をつける際など扉の引込部が干渉し邪魔をしますので、扉の引込部を玄関側か廊下側に設置するのが一般的となります。(扉を隠す引込戸にすると費用は嵩みますがベストなご提案です)
②ウォークインクローゼット
【特 徴】
ご夫婦の主寝室に備える事が多く、人が入れる広さが有り、室内で着替可能な収納庫です。納戸と同じようにタンス等も収納可能です。
【注意点】
■ 室内には、通気の為の窓開口部を設け、更に入口扉をガラリ付にし、室内換気扇を取付け、衣類の臭気拡散や防虫対策に備えます。
■室内には、コーディネート確認の為にできれば全身が映る姿見の鏡が必要です。
■オシャレな方は、当然、靴を履いて全身のコーディネート確認をされますので、下に敷く時のマットなどが収納できる工夫が必要です。
■衣類の量にもよりますが、理想は夫婦別々に設置すると、とても便利です。互いに気兼ねなくお出掛けの準備等が可能となります。また特に、女性が着替えやコーディネートに時間を要しますので、どちらかを優先する場合は、奥様用に設置する事をお薦めします。
■ハンガーパイプを上下二段に設置する時は、上着の着丈と使用するハンガ ーサイズを確認し、服の裾がパイプに触れない設計配慮が必要です。
③クローゼット
【特 徴】
ご夫婦以外の子供室等の居室に備える事が多い収納庫です。
【注意点】
■玄関スペースに余裕があり、暮らしのマナーと格式ある住まい造りをする場合(コート類は部屋に持ち込まない考え方)は、コート類のクローク収納庫としの設置もあります。各ご家庭での生活習慣を確認する必要があります。
■内部には入れませんので、扉を開放し内部が見渡せる工夫が必要。
■衣類の保護の為に、扉はガラリ付とし通気を工夫します。
■コーディネート確認の為に姿見の鏡を扉裏か室内に設置します。
■押入を改装したクローゼットは、奥行が有り過ぎますので、奥に棚をつけるなどの工夫が必要です。
■ハンガーパイプ上下二段設置はウォークインクローゼット(服の裾がパイプに触れない設計配慮)に同じ。
■折戸の場合は、扉を自由な位置に移動でき開閉可能な金具がありますので、得に狭い部屋で使用する際は活用をお薦めします。
3.クローゼット収納計画の進め方
MY HOME-STYLE 住まい設計工房の『クローゼット設計時の進め方10段階』
①住まう方々のお持ちの衣類の量を、パイプに掛ける長さと引出の段・本数等で概要量を確認します。
②ハンガーパイプにかける形式の衣類の量(スーツ丈とコート類別に)と特にスーツを着る方の場合は、シャツ類をハンガーに掛けるか折りたたんで収納されるか。
③女性の場合、特に注意する点として、丈が長いワンピース系の量とスカートとパンツ系の量とかけ方、更にニット類の仕舞われ方(吊るさない事を前提に重ねて収納方式か1枚毎収納方式か)
④衣替した衣料の収納方法と場所(寝室か別のカ所でも可か)。
⑤鞄、バック、アクセサリー等の量と収納方法とDIY収納の好み。
⑥全体の間取を考慮し、なるべくクローゼットが長くとれる間取を優先し設計。
⑦住まう方の衣類の量と収納方法をもとに、一箇所毎のクローゼットの詳細設計。その際、奥行・間口は極限まで縮めて最小寸法で検討。(収納場所を確保の為)
⑧室内又はクローゼット扉に姿見の鏡を取付。(できれば扉は通気ガラリ式折戸)
⑨予算が有る場合、クローゼット内部に桐(キリ)板材を貼り仕上げます。竹炭を壁に埋め込むのも効果があります。(予算がない場合は、クローゼット用の吸湿ボードかシナ合板素地を代用し使用)
⑩最後に図面で詳しく説明。ご要望があれば再度設計し修正して完了です。
このような段階でクローゼット設計が進みます。何度も打合せの都度、少しずつ変更され、最後に皆さんがイメージされるクローゼット設計が完成する事になります。
お気に入りの服が大切にしまわれ、お出かけ時のコーディネートが、とても楽しくなる収納術。でも一つ一つが皆さん独自のオリジナルなクローゼットなのです。
日々の暮らしの中で、オシャレは貴方の個性を醸しだす大切な暮らしの楽しくみの一つです。
4.押入・物入形式の収納計画の進め方
ここで少し住まい造りの収納に関して、その一般的なあり方を確認してみましょう。
和室には押入、洋室にはクローゼット、玄関・廊下・リビングには共有の物入や納戸が一般的です。
でも、和室でお布団を使用し眠る日々の暮らしの中で、ここでちょっとした疑問がわいてきます。
それは、お布団のサイズは一般的に幅1000㎜×長さ2000~21000㎜。
なのに、何故、出し入れする押入のサイズは、一般的に幅1820㎜で奥行910㎜となるのでしょうか?
この疑問の意味が『今ひとつピンとこない方々』の為に以下の図でご紹介しましょう!
1)押入を考える
また奥行きが910㎜の為に二つ折りでは入らず、三つ折では嵩張る厚みとなり、押入式の収納は、有効に使われているとは言いがたい場合があります。
このような生活者の疑問や不自由な点を何故か殆どの場合、なおざりにしてきた経緯が業界にあります。
そこで大切な事が、マンションであれ戸建であれ一言『お布団が出し入れし易い押入にして下さい!』と工事業者様や設計の方にメッセージを送る事です!
大変残念なことですが、押入ひとつにしても、このような問題が残されたままで、住まい造りには、解決すべき課題がまだまだあり、改善にチャレンジし遣り甲斐がある領域と言えます。
最近では、整理収納アドバイザーなる職業もあるほどで、
住まいの収納に関しては、多くの方々(特に分譲マンションや戸建ご購入の方々)が悩み多き問題とされています。
続いて押入れの形式を簡単にご紹介します。
押入形式は内部に棚がある枕棚(天棚)式と上部にも収納庫がある天袋付があります。
【押入の特徴等】
①布団を含め大きな物の収納庫として利用されますので和室に付属する場合が多い。
②収納可能な棚は、底板と中段と天袋(又は枕棚)で棚は3段で小物は箱等に入れ収納します。
③奥行きが深い為に、収納物によっては使い難い収納庫となります。大きな物の収納に適しています。押入幅が芯寸法で1,200㎜~1,500㎜前後では、襖戸の両開き形式も可能です。
④中段棚に引出を取付ける仕様のタイプもあります。
2)物入を考える
▼下図は、掃除機を収納する場合を例に物入の形体を提案するスケッチです。
①初めに物入収納の扉の形体から上図の『◆収納庫平面図◆』をご覧下さい。
扉種類としては、開戸、引戸、折戸の以下の3種類あります。(図面には開戸と折戸を記載)
【開戸】収納庫の幅(間口)の半分が扉の幅となり、押入幅の1820㎜では扉幅が広過ぎ、開閉がし難く、更に開閉域(扉の開閉する際の軌跡)が広い為に、収納庫前面に空いたスペースが必要となります。
適切な収納庫の間口限度としては、芯寸法で1365㎜(扉幅で600㎜前後)が最適です。
【引戸】扉が二枚重なる為に、扉二枚の厚み分の収納庫の奥行が浅くなり、間口が910㎜以下(扉幅で500㎜前後)では開閉時に扉のバランスが悪くなり開けたて時にガタつく場合が有ります。
最近では、押入以外の収納庫では見る機会が激減しています。
活用できる事例としては、キッチンの狭い箇所での調味料入れ等のガラス引戸収納庫や趣味の小物のガラス引戸収納庫などがありますね。また作業をするカウンター上の収納庫には引戸形式収納は、カウンターの上の物を移動せず物の出し入れが可能なためにとても便利と言えます。
【折戸】開閉域が狭く、費用は高くなりますがマンション等の狭い住まいの収納形式の場合に有効に活用できます。収納庫の幅によって2枚か4枚折戸を採用します。
折戸の少し高い仕様の金具の場合は、扉の位置を間口間で自由にスライドできますので、出し入れがし易くなるメリットがあります。
操作によって、幼児の場合など扉の隙間に指を挟みやすくなる場合あり注意が必要です。
②次に、収納庫内部に関し上図の『◆収納庫内姿◆』と『◆収納正面姿-1◆』をご覧下さい。
費用は掛かりますが、内部をどの程度の仕様にするかで、収納し出し入れし易いか否かが決まります。
この事例では、掃除機収納個所は固定棚とし、一番使い勝手が良い位置の扉④の個所はスライド式棚で中の物の確認や出し入れをしやすくしています。一方、扉③の上部は、棚板設置フリーとし、@15㎜前後から自由に物の高さに合わせて棚板を設置できる仕様です。
一つ一つの細工や工夫は、当然、費用となって皆さんに影響しますので、費用の配分には、使い勝手等を充分にご説明し、納得される場合にのみ、有効に費用配分していきます。
▼棚板設置フリーの費用をおさえた事例は、写真で見ると下のような外観です。
ここで少し専門家談を・・・
▲上記写真の収納庫内の壁際にある、わずかな隙間!気になる方は気になりますね!そこで腕に自信がある大工さんは、次の写真のような細工をされ住む方々の拘りに配慮されます。
如何ですか?レールと側板が隙間無く同じ面(面一:ツライチ)に揃って綺麗ですね!
大切な事ですが、この細工も費用がかかりますので、使用する方々とご相談して決める内容となります。
更に、扉⑤の個所は、重量物の収納庫として部屋の床と収納庫底の段差をつけず、物を引きずり収納する方が便利ですので、収納庫内外の床を同じ仕上にし段差をなくします。
これらは、収納する物が決まっている場合とそうでない場合がありますので、住まう方との綿密なヒアリング等の打ち合わせが必要となり。苦手な方には少し手間が掛かる作業となります。
勿論、『一任します』で良い場合は問題ありませんが、収納したい物がその個所に収納出来ない事が無いようにだけは注意しなければいけません。
③次に、扉の形状ですが、『◆収納正面姿-1◆』と『◆収納正面姿-2◆』をご覧下さい。
最近の主流は費用を押える為と見た目の豪華さから、扉の高さが天井迄の形体が殆どです。
図面中のコメントに記載のように、扉を開閉する際に中の物が全部見えてしまいますので、来客がある部屋での収納庫の扉では、気にされる場合は注意が必要となります。
費用は嵩みますが、より使い易さにこだわる場合は、収納個所毎に扉を開閉した方が良い場合がありますので、事前の検討が必要となります。
④!ここで、少しだけアイデアのご紹介!『◆収納庫平面図◆』をご覧下さい。
ついつい、収納庫内部にばかり目が行きますが、実は冷蔵庫の扉の考えを活用すると?
必要な個所の扉裏に簡単な収納ボックスや籠をつけると非常に便利な場合があります。
上図の『扉裏のこの空間に収納』を活用した形体。但しこの場合は、扉の芯材の位置や構成材を吊金具等を事前に検討しないと、後で出来ない事になりますのでご注意下さい。
収納の究極?、それは造作注文家具となるかもしれません!?
5.住まい造りの収納の工夫とは
ここでは、一般的な収納庫とは異なる場所のマンション収納場所の事例をご紹介します。
①廊下
・トイレ・洗面などの天井裏を収納庫とする工夫
・一般的に廊下・トイレ・洗面などの天井裏は換気扇の為の風洞や機器が埋てあり使用できない場合もありますが、風洞を片側に寄せて、収納スペースを確保できる場合もあり、保管だけでもしたい物の収納に適しています。
②床下に収納庫を作る工夫
・浴室がユニットバスの場合は、洗面室床が嵩上げされている場合が多く、床下に物入れを作る事も可能な場合がります。
③壁厚を少しだけ厚くし、靴や本棚として活用する工夫
・最近のマンションは軽量鉄骨の下地材で、壁厚を薄く(65㎜~)が主流となってきていますが、古いマンションの場合は、木軸下地で壁厚が85㎜~の場合があり、例えば文庫本(奥行105㎜)や新書などの本棚として活用可能です。
・靴を縦に収納する従来の発送から、狭いマンションの空間を少しでも有効に活用しようとすると靴を横に収納し廊下の壁面に埋め込む方法もあります。
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※一歩ずつ、少しずつ、確実に、貴方の住まい造り計画が前に進み、理想に近づく事を願っています。