夏に住まい造りを計画する際、ついつい疎かになりがちな『陽あたり』をテーマに、ご紹介させていただきます。
このブログ内の『陽あたり』の定義は、太陽の陽射しが直接差し込む状態を意味し、採光(光をとりいれる)とは異なる点をご注意下さい。
何故、このような定義を改めて皆さんにご説明するのは、多くのネット情報やブログ記事では、陽あたりと採光が混在した状態での記事が多くあり、記事の内容からその記事をお読みになる方々が誤解されるような内容が多いからです。
また、明らかに不動産物件の販売上の目的から、不動産関係のネット情報やブログは、企画された不動産物件販売を意図して、記載される内容の為に、特に、マンション販売の不動産会社様の一部の記事においては、疑問を抱かざるを得ない内容もあります。
その真の理由は、マンション販売物件の多くが、陽あたりに大きく影響する建物のバルコニー側方位(向き)が南向き以外の分譲物件が圧倒的に多い為に、南向き以外のマンション物件を、あえて『陽あたり以外のメリットがあるマンション』などとして、正当化した表現で投稿したブログだと言えます。
読者の方々には、錯綜し混沌とした情報に惑わされないよう、ご注意下さい。
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《 目 次 》
1.初めに
2.陽あたりが良い敷地形状と方位(敷地の物理的特性)
3.建物単体設計で工夫し陽あたりを良くする4つの方法
4.陽のあたる家の間取りご紹介
5.まとめ
1.初めに
マンション住まいの私としては、予期はしていたものの、苦い経験があります。
マンションの方位は、南南東で、南西に空き地がある南西角部屋を購入しました。
購入後の二年間は、南西空地の関係から、冬は特に一日中、陽射しが当る、陽あたりの良いマンションで、冬でも日中は暖房をつける事なく、また夏は、周辺の建物が西日を遮ってくれ、快適な生活をおくっておりました。
三年目に、空き地には6階建てのマンションが建設され、それ以来、冬場の結露や光熱費の高騰に家内は悩まされていました。
一戸建ての注文住宅で、日当りの良い家をご計画されたい方は、これからご紹介致します、土地の6要件と建物工夫4手法で陽のあたる家は実現可能です。
それでは、テーマ『陽あたりの良い家|敷地6要件・設計4手法|MYHOME-STYLE』の本論へ移行致します。
今回のブログは、マンション住まいで、これから先リフォームをご計画の方には、主にマンション建物の方位と周辺環境の話となりますが、一読の価値はあると思いますのでご了承下さい。
2.陽あたりが良い敷地形状と方位(敷地の物理的特性)
陽あたりが良い敷地形状と方位としては、以下の6つの要件があります。
要件①|南側間口が広い。
要件②|計画敷地南側に道路がある。
要件③|計画建物南側外壁位置から南側隣地の境界線迄の距離が9m以上ある。
(1階の窓際床面から部屋の奥迄、陽が当る事を前提とした場合)
要件④|計画敷地の南側前面道路より計画敷地の地盤面が高い。
(2m未満が好ましい⇔2m超えると擁壁規制を受け、工事費用激増)
要件⑤|計画敷地の南隣地側に、背丈が高い樹木が少ない公園や空き地がある。
(将来、公園と空き地は変更される事もあり不確定要素の為に注意が必要)
要件⑥|敷地の方位は、陽あたりを前提とした場合は、一般的に南向きが良いとされています。但し、真南向きの場合で、北側が接道(道路に面する部分)方位の場合、敷地周辺環境によっては、北側玄関周辺の植栽などに陽が当たらず、枯れてしまう事もあり、土地から購入し計画される方は、現地を訪れ、植栽枯れの問題がないか周辺住居の北側植栽状態を確認しておきましょう。
前述の①~④迄を、以下の二つの図で具体的にご紹介しましょう。
■一つ目の図は、一般的な平坦な敷地の場合の、陽あたり状況の検証図です。
上図は、東京の冬至の太陽高度(約31度)から、南中時(太陽が一番高い位置)の住まいに陽が差込む状況を図にしたものです。
1階の床の高さを60㎝とした場合、南側隣地に2階建の建物が建っている時は、1階のリビングの窓際床に陽が差込む為には、9m程、隣地迄の距離が有れば、充分な陽射しが期待できます。
計画敷地の南側に道路がある場合は、9mから道路の幅員を除外した距離が計画敷地の南側に確保できれば、冬でも暖房いらずのご生活が可能となります。
後ほどご紹介しますが、この間取のリビングは奥行が5.5m(3間)程ですが、リビング北側の壁面に迄、陽が差込むように、リビング上階の部分を吹抜けとし2階にも開閉可能な窓を設けています。
この場合のリビングルームの広さは、12帖有りますが、この程度であれば、吹抜けが無くとも、リビングルームは、陽射しだけで充分に暖まります。
当然ですが、暖気は部屋上部上昇しますので、2階の吹抜け天井にはシーリングファンを設置し、空気が循環する工夫が必要です。
【ご参照】
ご参考に、上図には、東京の夏至の太陽高度も記載(軒先の垂直に近い黒線箇所)されており、この図から、軒の出を90㎝ほど確保する事が、夏の強い陽射しを遮断する際に、重要な役割を果たす事がご理解戴けるでしょう。
最近、軒の出が殆どない建物を見かけますが、夏の陽射し対策の面では不十分な設計と言えます。特に、リビングルームの窓際にソファーを配置する場合は、ソファーなどお気に入りの家具が日焼けする事となりますので、軒の出を充分に確保しましょう。
①南側前面道路迄の距離が短い場合、歩行者や通行する車と視線が合い、プライバシーが保ちにくくなり、窓を開放し辛い場合があります。
②敷地の関係から、建物南側に駐車場を設置する場合、夏場は車やコンクリート床が太陽光で暖まり、窓から熱風が入る場合が有ります。
③更に、南側間口(幅間隔)が狭い場合は、玄関アプローチや駐車スペース等で、敷地を使用する割合が増えますので、庭の確保が難しく、南側のお部屋が 落ち着かない部屋となる事も有り、注意が必要です。
④以上の内容から、南側に道路が有る事は日当り確保の面からは、メリットが有りますが、間取りと併行し前述①~③の注意点をご理解された上で、住まい造りを計画する事が重要です。
■次に、二つ目の図は、計画敷地が道路面より高い場合の検証図です。
少し複雑なように見えますが、道路面との段差が2m(2メートル)の場合を主体に図式化しています。
この図から、道路面との段差が2m有る場合、道路幅員が4mの時の計画敷地の建物から南側距離は、2m弱あれば充分な陽射しが期待できる事になります。
段差が1mの場合は、上図(※陽あたり検証図式②※)の左側に破線で表示した位置に、南側隣地の建物が位置しますので、前述の2m弱に1,650㎜加えた程度で充分な陽射しが確保できる事になります。
敷地と南側道路面に段差があると南側迄の距離(南北間距離)が極端に短くても良い事がご理解戴けるでしょう。
分譲マンション購入時に、上階になるほど販売価格が高くなるのは、一つには、日本人独特の陽あたりを重要視する方々が多い事と、もう一つには、立地条件によって眺望が期待できる為に、階が上になるほど価格が高くなるのです。
この考え方から、南側向き以外の分譲マンションの場合、よほどの眺望が望めない場合は、南側からの陽あたりが望めない分譲マンションは、ある面、上階程価格が高いのは、買い手として不満要素となるとも言えます。
3.建物単体設計で工夫し陽あたりを良くする4つの方法
ここからは、建物単体で陽あたりを良くする4つの手法をご紹介しましょう。
手法①|地盤面から高い位置から陽を取り入れる為に、窓開口の上端(ウワバ:上の高さ位置)を高い位置に取り付る。
手法②|建物の1階奥まで陽射しを取込むには、その部屋前面上部の二階を吹抜けとするか、床の仕上げを投光性がある強化ガラスなどの仕上げを採用する。
手法③|建物の軒の出や庇の出を短くする。(但し、夏場は陽射しが強くなる)
二つ目の図の赤色斜線位置が、冬至の軒の出を短くした場合です。
手法④|計画敷地の南側は、平屋とし中庭を挟み北側に平屋もしくは二階建の住まいとすると、中庭からの陽射しが期待できます。一般的に言われるコートハウスです。京都の町屋がこの手法を取り入れて、陽射しと通風確保に工夫を凝らしています。特に、南北間の奥行がある土地に有効な手法と言えます。
このように、建物単体の設計を工夫する事で、陽あたりの良い家を設計する事は可能となります。
【ご参照】
平屋の住まい造りが一番贅沢で理想の家と言われる事があります。
平屋と言っても、多種多様ですが、間取り相談などでよく見かける事例として疑問を抱かざるを得ない事例があります。
それは、広い敷地に、矩形(四角形)の住まいを配置しただけの、敷地を活かさずに、単に住まいが敷地に配置されているだけの事例です。
建築費用を低減する為に、矩形の住まい造りをする事は設計のある面の基本と言えますが、せっかくの広い敷地の場合は、アトリエなどの特殊な部屋を除き、可能であれば、どの部屋も陽が差し込み、風通しがよい住まいが理想ではないでしょうか?
平屋で住まい造りをご計画されたい方々は、建築費用予算を前提に、本来の平屋の魅力を住まい造りに活かされる事を、今一度、お考えになるのは如何でしょうか?
『トップライトを確保し陽射しを取入れる』との記載記事が散見しますが、南側面の屋根に取り付けた場合、夏の陽射し対策は大変難しく、残念ですが完璧に解決する事は『ほぼ不可能に近い』と言えます。
遮熱硝子を使用した複層や三層の窓硝子が有り、ある程度の対策は可能ですが、取付ける位置は、南面の場合、吹抜けなどの高い位置にあるトップライトで、暖められた暖気を感じない高さが前提となります。2階南面の傾斜天井は、避けたほうが懸命です。北側であれば2階の傾斜天井が『採光』の面からは有効で、安定した光が確保可能です。(アトリエや落ちついた書斎向けの採光手法)
4.『陽のあたる家』の間取りご紹介
今回、前述でご説明に使用した建物断面スケッチでモデルとして採用した間取りです。
一般的に、浴室や洗面脱衣室は、南側に配置される事は少ないですが、この間取りでは、あえて『陽のあたる家』とテーマし、玄関、浴室、洗面脱衣室、階段室も、冬でも日中はサンサンと陽が差し込む住まいの間取りを作成しました。
当然、下記の配置図のように南側隣地までの距離が確保できると、日中に照明器具を点灯する必要や暖房器具を運転する必要も無くなります。
本体建坪19坪(玄関アプローチ部の3坪を除外)、2階約15坪、述床面積34坪となり、収納比率は、少し高めの16.45%となります。
2階は、子供室はコンパクトとしながらもウォークインクローゼット付、主寝室は、ご夫婦の書斎コーナーを備え、奥様用のウォークインクローゼット付です。
詳細の設計趣旨等は、別に投稿致しますブログにて改めてご紹介させて戴きます。
5.まとめ
『陽のあたる家』は、ご計画地の土地の6つの要件が大きく影響しますので、土地購入から住まい造りをご計画予定の方々は、本ブログをご参考になさって下さい。
都心部や近郊では、陽あたりが良い南側道路情報など、入手が難しい場合も有り、お住まいになられたい地域の不動産業者様とのコミュニケーションが必要です。
特に、南面道路の土地は、建売住宅や売立住宅の開発会社様が、一般の方より高額で購入し、高額で販売される場合が多く、価格交渉等で難航される場合が有り、注意が必要です。
計画予定地の信頼できる不動産業者様と親しくなる事が重要です。
一方、『陽のあたる家』の住まい独自の工夫は、住まい手の方々のご意向を確認し、各部屋のレイアウトや家具の配置など総合的に判断し、諸条件(住まい手のご意向を含めた設計与件)を遂行し、次第に間取りの形となり、平面図や断面図、イメージCGなどの資料を基に、最終的には陽のあたる工夫の施策を取捨選択する必要性が発生します。
今回のご提案モデル間取りの設計趣旨等を、次回に投稿致しますので、皆さんの住まい造りのご参考になさって下さい。
~★~☆~※ここ迄お読み戴き、大変ありがとうございます※~☆~★~
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※一歩ずつ、少しずつ、確実に、貴方の住まい造り計画が前に進み、理想に近づく事を願っています。