この頁では、未だに住まい造りで問題視される、『住まい造りの結露対策(特に窓開口部廻り』に関してその対策をご紹介致します。
住まい造りの結露対策は、①窓等の開口部の仕様、②断熱性能、③住まいの構造種類、④室内仕上げの4つの要素と密接な関わりが有ります。
このサイトでは、新築住宅とマンションリフォーム計画時の二つのケースに関してその対策をご紹介します。
2020年からは政府指導の元、住まいの省エネルギー基準がより厳しく指定され、国民に義務化されます。(国交省は、実施をみあわせる予定)
これから先、住まい造りをご計画される方々は、費用に大きく影響するためその準備が必要となります。
1.はじめに
日本国内において、結露に影響する『建物の断熱性能等が基準化』されたのは、
①1980年(昭和55年)の『旧省エネ基準(等級2)』で、
以降は『省エネルギー化の促進』と、地球温暖化防止の国際的な取組連携強化策の影響から
②1992年(平成4年)に『新省エネ基準(等級3)』、
③1999年(平成11年)に次世代省エネ基準(等級4)+冬の断熱性能と夏の日射遮蔽のレベルアップ、
④2013年(平成25年)の『改正省エネ基準+一次エネルギー消費基準』の4回に渡り、省エネルギーに関する断熱性能基準値は見直され
⑤先の2020年にはより厳しい基準となり、更に国民に義務化される事となりました。(国交省は、実施をみあわせる予定)
【重要】
住まい造りの省エネ基準を前提とした、断熱仕様等に関しては、2020年以降に正式にコンテンツとして掲載する予定です。
▼下記図表は、省エネ基準の変遷と変化の一部を分かりやすく比較した図表です。
▼下記図表は、日本と諸外国の『窓素材の熱貫流率』を比較した図表です。
【重要】
多くの方が、お住まいの窓廻の結露でお困りだった主な原因は、
諸外国と比較し、窓仕様(材質等)と断熱性能等の基準があまりに低すぎた結果であり、ある面で国の住まい造りの指導と業界の怠慢とも言えます。
図表から、冬が厳しい諸外国と比較し、『日本の熱貫流率基準が低い(数値が大きい)』事が分かります。
世界の中でも日本が様々な面で先進国と思われている多くの方々は、住まい造りにおいて、住まいの広さが狭く海外の方々から、『ウサギ小屋』と称される事を含め、断熱性能においても国際的に低い水準である事を知る必要があります。
2.結露に関する基本的な知識
1)結露に大きく影響する素材の『熱貫流率』を知る。
上表から、建築素材の熱貫流率が高い程、熱が伝わり易く、結露に影響する冬の寒気が素材を通過し室内の空気を冷やす為に結露が生じるのです。冬の季節、アルミサッシやガラスが結露するのは、その現象の現れです。
2)結露の主な要因
南北に長い国である日本の結露現象は、様々な暮らしの要因が重なり発生します。
【結露の主な要因:5項目】
①室内の換気不足によるもの・・・室内が許容値以上の湿度となる。
②結露面の温度低下(冬の室内外の温度差)・・・窓素材や躯体素材の熱貫流率が影響する。
③水蒸気が発生し易い空間・・・キッチン、洗面・浴室、燃焼式暖房を使用。
④人が大勢集まる空間・・・人体からの放熱・方湿が影響
⑤仕上材に調湿(湿度を調整する機能)機能が無い。
皆さんの暮らしの中で①、③~⑤項は、調整可能な改善項目ですが、②項は、住まい造りにおいて、建築工事の段階でしっかりとした対応が必要です。
3)結露を放置するとカビを発生し、更に健康を阻害する要因となる事も
鉄筋コンクリート造(通称RC造)のマンションで北側のお部屋によく見かける壁紙の黒いシミは、主に結露が影響し黒カビが発生した現象です。ダニも発生し易くなり、喘息の原因や人体への悪影響があるとされ、ネットで検索するとカビ除去の専門業者も多く存在しています。
3.窓仕様(材質ほか)の世界基準と国内基準
世界の先進国と称される日本国内では、諸外国に遅れをとり、熱貫流率が大きいアルミサッシ窓を多用する為に、当然と言って良い程、窓廻の結露が発生する一番の原因となっています。
下記図表の窓材質国際的基準は、樹脂製窓が一番多く、次に木製窓となります。
国内の木製窓は、輸入品と国産品が有り、価格的にはかなりの高額商品となります。
国内にアルミサッシが普及した要因として、一般的な木製窓と比較して気密性が高く安価である事。更には建築基準法に窓開口部の防火戸規制があり、住まい造りの木製窓が法規制を受け使用できない事例が多い事に有ります。
4.断熱性能向上を図る改正品確法と住まい造りの実態
まず、この基準も国際的に見ると非常に低い基準となっており、1980年迄は法規制さえされていません。ある面で、国が指導を怠った為に、地球温暖化などの影響をも含め、急遽慌てて対応する事となった背景があります。
断熱性能等の基準値(目標値)は、本頁の冒頭にご紹介しましたように、過去に数回の改定がありましたが、住まい造りの実態は、①適切な仕様の断熱材未使用、②断熱材厚み指定に対する厚み不足、③室内湿度の壁内浸透の悪影響、④アルミサッシ使用などから、断熱性能低下に繋がり結露発生要因となる工事実態が多いのが現状です。
▼下記図表は経済産業庁からの引用で、特に『窓からの熱損失が大きい事』が解ります。
特にアルミ製窓の結露への影響は、『窓からの熱損失が大きく窓廻の結露を発生する主要因』となっており、極端な表現をすれば、窓材質をアルミ以外の素材に変更しない限り、結露を解決する方法はありません。(住まい造りで24時間換気システムが稼働している住まいでは、発生する度合いが少なくなっているはずです)
つまり皆さんが、どのように壁面や床下、更に天井裏などの断熱性能を向上させても、肝心な窓の仕様を今までと同じとした場合は、結露は完全には防げない事となります。
5.住まいの構造種類毎の結露の傾向
初めに、住まい造りで使用される躯体素材の熱伝導率を比較確認してみます。
▼下記図表は建築工事で使用される主な素材別の熱伝導率です。
茶色の枠線で囲った個所が主に建築工事で使用される素材です。
熱貫流率が高い躯体素材順(結露し易い素材順)として①鉄骨、②鉄筋コンクリート、③鉄筋鉄骨コンクリート、④木材の順となります。
結露は、当然、躯体素材の材質の熱貫流率に影響を受けますが、素材に合わせた断熱仕様と工法の影響もうけ、前述の順位は、躯体素材単体の熱貫流率で結露し易い構造種類を順位付けしたものですので、ご注意下さい。
素材の熱貫流率が高い程、素材に対する断熱工事をしっかり実施しないと素材表面が結露を生じる事となります。
【ご注意!】
鉄筋コンクリート造の住宅では、コンクリート内部に水分を含んでいます。その経年経過実態を検証されたデータを見つける事は出来ませんでしたが、コンクリート躯体の水分乾燥には数年間要するのが実態です。つまりコンクリート躯体が乾燥している期間は、躯体から水分が発生している事になり、更に結露を促進させる躯体構造である言えます。
6.費用予算と内装イメージ以外の仕上材の役割
昔の家は、その構法と仕様(部屋毎の間仕切が襖や障子で壁が無く開放可能な家)から冬は寒く、夏は涼しい家でした。また障子や襖は紙や木材で造られており当然、調湿機能を備えていました。
最近の住まい造りで使用される素材の多くは、ビニールクロスと呼ばれる壁紙で、表面は調湿機能が無いビニールで覆われていますので、室内の湿度を調整する機能を備えてはいません。(一部メーカーは、調湿機能表示の商品がありますがその能力は未定です)
住まいにはその中で暮らす人が生活しますが、人は呼吸と汗腺から水蒸気を発生します。つまり人が暮らす住まいは、必ず水蒸気を発生するので、密閉性が向上した現状の住まいでは、何らかの方法で水蒸気を排出・吸収する仕組みが必要となります。
そこで、最近は調湿機能を備えた古くからの日本の建材である左官仕上に代表される『珪藻土』や『漆喰』などの素材が注目を集めています。
また、タイルメーカーでもあるLIXILの室内タイル『エコカラット』や塗装メーカー様の塗料にも調湿機能を訴求する塗装商品が販売されてきています。
見方を変えると、日本古来の室内建具の障子や襖は木製下地に和紙の仕上材ですので、調湿機能を幾分備えた優れた建具と言えます。
また、費用はビニールクロスと比較し高額となりますが、木材を壁や床、天井の仕上材として使用する事も結露対策に繋がります。
流行りのポイント貼り(部分的な仕上材)で、木材はインテリア建材としてコーディネート可能。
カフェ風インテリアで古材(使用済み木材)を使用するのもお好みで可能です。寝室天井に桧の無垢板(小節程度:節目が少ない木材)をマンションリフォームで使用した時、ご主人様から『桧の香りが心地よく、寝つきが良くなった』とのお喜びの言葉を頂戴しました。
【ご注意!】
①木材・古材を採用される時は、表面が塗装などで調湿機能を損なっていない木材かを確認し採用される事が必要です。
②寒い冬に、24時間換気システムを運転しても結露が発生する住まいでは、室内仕上材を湿度調整機能を備えた仕上材に貼替リフォームされる事をお薦めします。
7.新築住宅の結露対策
ここでは、建物の構造種類にかかわらず、優先度順に結露対策効果がある手法をご紹介致します。
費用がかさむ内容もあり、皆さんは手法を選択し順位づけに迷われるでしょうが、アルミ以外の窓の材質素材を選択される事に費用を集中配分され、窓以外は一般的な手法を実施する方が賢明といえます。
■結露予防になる優先度順の具体的な手法
①窓材質をアルミ+複合素材とするか、防火戸規制が無い個所は木製窓を採用
②窓ガラスは、複層二枚ガラスか、三層トリプルガラスを採用する。
③断熱等級を指定地域区分の基準で4等級とし、冷暖房効果を上げランニングコスト(運転費)を削減する。
※▼指定地域別断熱材の種類と厚みを採用
▲上図表の充填・外張り断熱などの工法毎に適切な断熱材を採用する
④室内仕上げ材に可能な範囲で調湿機能素材を採用する。
⑤室内扉や建具は極力、木製を採用し、メーカー品で表面が吸湿性が無い素材を控える。
8.マンションリフォームの結露対策
平成15年7月1日以降に建てられた新築マンション販売の場合、24時間換気システム(以降24H換気と記す)が設置され機能していれば、暮しの中で問題になるほどの結露は起きにくい筈ですが、窓サッシ仕様(断熱性能)が古く良くない場合や24H換気を作動していない場合には窓廻りの結露は発生します。
放置しておくと黒カビが発生し、喘息などのアレルギー疾患を発症する原因になるとも言われています。
ここでは、既存の窓は、共有物となる為に既存窓取替を除外した各住戸単位で実施可能な手法をご紹介致します。お住まいのマンション大規模改修計画書にて、既存の窓を改修工事する場合(既存カバー工法含む)は、一番優先して実施すべき工事内容となります。
1)マンションリフォーム結露対策の進め方
①既存住居の結露状況調査・確認(家具を移動し家具背面の壁を見て確認)
a.結露が発生する窓の窓枠が湿潤状態やカビが生えているか?
b.結露が発生する部屋の外壁面側の壁紙、仕上材にカビが生えているか?
c.同様に、外壁面と繋がる隣戸側の壁(界壁)側にカビが生えているか?
d.結露が発生する部屋の床材にカビが生えているか?
以上の4項目を実施され、結露が影響している範囲と内容を把握します。
a~d迄すべてが該当する場合は、黒カビなどの除去作業を含め本格的な改修工事(既存室内解体・カビ除去・新規断熱・内窓設置・内装仕上)が必要です。
②結露状況別改修工事内容
はじめに、既に本頁でご紹介しましたように、国内の窓仕様と断熱仕様の基準は世界的に見ても非常に低い基準であり、極端な表現をすれば『窓仕様は結露促進窓で断熱仕様は無いよりは益し』程度となっています。
室内壁のカビは、窓の結露水が影響して発生する場合が多く見受けられますが、マンションによっては、断熱仕様が低い為に、コンクリート等の壁面自体が結露しカビを発生させている可能性もあります。
②-1)前②項のaのみ状況の改修工事内容
①内窓(樹脂製か木製)を設置し、ガラスは複層ペアーガラスとする。
▼国内大手二社のYKKAP社様とLIXIL社様の内窓商品事例
②-2)前②項のa+bの状況の改修工事内容
①内窓(樹脂製か木製)を設置し、ガラスは複層ペアーガラスとする。
②既存窓の外壁側の室内壁を解体(断熱材除去まで)し、コンクリート躯体のカビ除去とカビ止め処置を実施後に新たに断熱材(東京Ⅳ値域の場合で一般的に、既存厚より40㎜~50㎜厚く成る為、部屋の面積が狭くなります)を施設し、下地ボード類と仕上材を施す。
③仕上材は、調湿機能の仕上材が好ましい。
②-3)前②項のa+b+cの状況の改修工事内容
①内窓(樹脂製か木製)を設置し、ガラスは複層ペアーガラスとする。
②既存窓の外壁側と界壁側の室内壁を解体(断熱材除去まで)し、コンクリート躯体のカビ除去とカビ止め処置を実施後に新たに断熱材(東京Ⅳ値域の場合で一般的に、既存厚より40㎜~50㎜厚く成る為、部屋の面積が狭くなります)を施設し、下地ボード類と仕上材を施す。
③仕上材は、調湿機能の仕上材が好ましい。
②-4)前②項のa+b+c+dの状況の改修工事内容
①内窓(樹脂製か木製)を設置し、ガラスは複層ペアーガラスとする。
②既存窓の外壁側と界壁側の室内壁と床仕上げと下地を解体(断熱材除去まで)し、壁・床コンクリート躯体のカビ除去とカビ止め処置を実施後に新たに断熱材(東京Ⅳ値域の場合で一般的に、既存厚より40㎜~50㎜厚く成る為、部屋の面積が狭くなります)を施設し、下地ボード類と仕上材を施す。
③コンクリート床の外壁側から室内側への奥行1.5mの範囲で、躯体のカビ発生状況を確認し、必要により断熱材を施し、更に必要がれば防音効果を配慮した二重床を施す。(既存の天井高より新規天井が低くなる事が前提)
④仕上材は、壁・床共に調湿機能の仕上材が好ましい。
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