このブログでは、毎日の暮らしに欠かせない、誰もが毎日数回は使用する住まい造りの大切な空間であるトイレに関して、ご紹介致します。
人が生活する所には必ずと言って良いほどトイレがあります。今回のテーマは「空間に学ぶ|トイレの品格と価値を高める九つの法則|住まい設計講座」と題し、日頃お世話になる大切な空間トイレのお話です。
『トイレが綺麗なお家は、家主のおもてなしの心の現れ』とか、トイレの神様が見ています等、トイレにまつわる話は様々ですが、ことその設計至っては改善する余地が多々あるのが現状です。
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1.初めに
某大手住設メーカーのプレゼンテーション部署に勤務し、全国の多くのハウスメーカー様や建築設計事務所様にプレゼンした経験の中、世界的に著名な建築家の作品で国内でも有名な建物のトイレ空間をご提案させて戴く機会がありました。
大変、残念な事に、よくある公共施設の水廻りのご提案対象建物と同じに、トイレの配置と与えられたスペースは燦々たる状況で、恐らく『トイレの設計等はスタッフの方々に一任されているかな?』の状況の中、最善のご提案をさせて戴いた記憶があります。
住まい造りにおいても、ある面、トイレは後回しとなり、ないがしろとなる傾向にあります。某大手住設メーカー勤務経験者の個人としては、プロフィールにてご紹介してますように、『水廻り空間と他の空間のバランスを整える事が住まいの価値を高める必要な設計姿勢』と理解しております。
今回のブログ読者の方は、このブログを読み終えると『トイレの基本知識を身に着けられ、様々なトイレを今後の日常生活の中で体験されると、トイレに関して、きっとトイレ博士レベルとなられ、新しいトイレ体験の度にそのトイレの良否を評価』されることでしょう。
自画自賛で読者の皆様からは苦笑を頂戴するかもしれませんが、サブタイトル「たかがトイレ?されどトイレ!深い~話」をご紹介させて戴きます。
ご自宅の新築やリフォーム工事の際、トイレ設計のご参考になると幸甚です。
2.手洗器は、手洗い独立タイプが基本
ロータンクの手洗器は、昔の公団が住宅を供給する際に、狭いトイレで手が洗える方法を苦心してメーカーと開発し普及した経緯があります。
海外には無い為に、外国の方はロータンクの手洗器便器を見ると、そのアイデアに驚かれる方が居るそうです。
ロータンク手洗器付の殆どの機種は、手洗時の水が跳ねで、壁が濡れたり水滴跡が残ったりして汚れます。その為、壁は濡れても心配ない物か掃除しやすい仕上材である事が重要です。
また、手洗い時には、姿勢が前屈みとなり高齢者には辛い姿勢となります。
賃貸住宅ならやむを得ませんが、新築やリフォームでの住まい造りの場合は、できれば手洗器は別に独立して設置した方が、化粧ポーチ置き場や身繕いなどを配慮した住まいとしての品格が維持でき、更に、使い易いトイレとなります。
①ご予算の都合上、どうしてもロータンク手洗付きの便器をお選びになる場合は、タンクについている吐水口(水が出る口部分)が泡沫栓(空気を含み易くソフトな水流が出てくる)の商品を選ばれると幾分、水の飛散が防げます。
②マンションリフォームで、既存の便器が床排水の場合、排水芯の位置が合えば、簡単に独立式手洗器を設置できる場合があります。以下の写真はLIXIL社様の便器ですが、TOTO社様も同様なリフォーム対応便器を販売しています。
大手住宅設備機器メーカーでリフォーム提案をしていた頃には、コンパクトなトイレ設計時は、基本的に座ったまま使用可能な手洗器付カウンターを何時も提案しお客様が驚かれていました。
日本人は綺麗好きと言われますが、皆さんは、用を足された後、手を洗ってから着衣されたいですか、それとも着衣した後に手を洗われたいですか?
同様に洗浄用のハンドルやリモコンの操作ボタンは、何時操作されますか?
どちらも可能とするのが、座ったまま使える手洗器付カウンターの設置です。
【トイレの価値を高める法則1】
手洗器は、独立タイプとすることが、レストルームクラスの品格を維持したトイレとなり、高齢者やご来客への配慮を可能にします。
3.トイレの広さと内部のレイアウト例
トイレの広さを畳一帖(柱芯間の寸法で幅910㎜×奥行1,820㎜)として図式で一覧化にすると下記の4つのパターンに分類されます。
ここでご紹介します広さ畳一帖のトイレは、決して理想とする形状と広さではありません。
日本の木造住宅のモジュール(基本的単位)から、一般的に認識されているトイレが、畳一帖サイズで多く計画されている為に、その形状を基本としてご紹介しています。
狭いトイレを否定するわけでは有りませんが、図の便器正面から見た間口は畳一帖の場合、柱芯間で910㎜の寸法で、内法有効で765~780㎜となり、少し狭い間口と言えます。
最近の方々の体格を考慮すると、適切なトイレ形状は、便器袖側に奥行きが浅いカウンターを設置すると、少なくても有効で間口900㎜~1,000㎜(柱芯間で1,050~1,150㎜)は欲しいところです。
貴方がご自分の住まいに欲しいトイレは、果たして上図のどのパターンでしょう?
【トイレの価値を高める法則2】
可能であれば、独立した手洗器設置や化粧棚、ポーチ置き場などを考慮すると、畳1帖以上の広さのトイレが好ましいと言えます。
4.トイレ利用時の具体的な行為の流れと注意点
日頃、多くの方々が何気なく使うトイレですが、その行動を細分化すると以下の13段階の行為となります。
①照明・換気扇スイッチON
②扉金具操作(解錠)・扉開
③入室・体の向き方向転換
④扉金具操作(施錠)・扉閉
⑤脱衣
⑥排泄
⑦排泄後の部位洗浄または紙拭い
⑧便器洗浄(ボタン・レバー操作)
⑨手洗い(ロータンク付手洗いの場合)
⑩手拭き・見繕い
⑪体の向き方向転換・扉金具操作(解錠)・扉開・退室
⑫体の向き方向転換・扉金具操作(施錠)・扉閉
⑬照明・換気扇スイッチOFF
【ご注意!】
この行為は、扉形態が開戸を基本としていますが、開戸操作は出入りの際に微妙に体を調整し行為しています。
読者の皆さんは、トイレを利用する時に、つま先や体の一部を扉や枠にぶつけた経験はありませんか?更に、外開きが主流となる最近では、トイレ入退室時の扉開閉の際に、ご自分やご家族が扉にぶつかりそうになったご経験はありませんが?
扉単体の対応を考慮すると、開戸よりは引戸を採用したほうが、出入し易く、特に、体の機能が衰える高齢者の方々には使い勝手が良くなります。特に、開戸では取っ手が丸い握り玉は、廻して開く操作が難しく、その際はレバーハンドルが適切です。但し、レバーハンドルは、廊下などを通行中に衣服の袖口にレバーが引っ掛かる事がありますのでご注意下さい。
【トイレの価値を高める法則3】
可能であれば、トイレの広さを確保し、扉は、内開か引戸を採用したほうが使い勝手は良く、入退室時の扉との干渉事故は減少し安全なトイレとなります。
この点は、緊急時開錠可能なヒンジを使い、特殊な枠と扉の収まりで問題は無くなります。 また、扉を框扉(扉の周囲に枠がつく仕様)とし、扉の中の鏡板(周囲枠に囲まれた部分)を取り外せる細工で中の人の救出は可能となります。但し、足を骨折し膝などをギブスで固定されると脚が曲げれずに、扉を開けたままトイレを使用せざるを得ない場合も稀にありますので、ご注意下さい。
5.利腕(ききうで)と紙巻器の位置関係
日本人はどちらかと言えば右利きが多い人種と言われています。読者の皆さんの利腕はどちらでしょうか?
何気なく毎日利用するトイレですが、紙巻器を利用する時は、以下の2つの方法で紙をカットするのが一般的です。
一つは、利腕と反対の手で紙抑えを固定し、利き腕側で紙をカットするか、もう一つは、紙抑えは抑えカバーの重さを利用し、利き腕側でカットする方法です。
ここでポイントは、どちらかと言えば紙をカットする際は、利き腕側を使用する事です。その意味では、手洗い器側の紙巻器は、前述のトイレパターンの①・②は右利き用、③・④は左利き用のトイレとなります。
【トイレの価値を高める法則4】
トイレットペーパーのカットし易さの面から考えると、紙巻器の位置は、便器に腰掛けた側の左配置は右利き用、右配置は左利き用のトイレとなります。
【ご参照】
もし貴方の今お住まいのトイレで、トイレットペーパーの切れ方が、むりやり切ったような跡が残り、更には、切った際の紙屑が散らかり、紙が下の方へ引出されブランとし、残ったままの状態になる場合は、恐らく上記のトイレ配置パターンで、右利きと左利きに対応した紙巻器配置ではなく、紙がカットし難いからと言えます。
6.住まいのパブリック階のトイレの配置
リビング・ダイニングやキッチンがレイアウトされるパブリック階では、トイレの位置は配慮が必要です。何故でしょう?
それは、パブリック階のトイレ利用者は、そこに住まわれる方々が毎日利用されるのは当然のこと、随時、住まい手のご友人・親類などの住まい手以外の方々の、両者が利用される為にトイレの位置配慮が必要となります。
何故?配慮が必要なのか?と問われると、その回答は正解か否かは難しい事ですが、一つには2020年のオリンピック招致のプレゼンテーションで話題となった『おもてなし』の精神が日本人の多くの方々に根差しているからではないでしょうか?
更に、ご家族だけの『家使い』であれば、『ほどほど』にの程度で、ご満足される方々が多いのですが、羞恥心があり恥じらいを重んじ、他者を気遣う日本人としての独特の考え方が影響しているのではないでしょうか?
【トイレの価値を高める法則5】
パブリック階トイレ配置の基本的配慮点を箇条書きにすると
①住まいの共有部にあり、出入時に来客と視線を合わせない位置。
②リビング・ダイニングなどから直接入る位置にない事。
③パブリック階のプライベート要素が高い、キッチンや洗面室を通過しない位置。
となります。
表現を変えて言えば、誰もが『気兼ねせずに使用できる位置』となります。
7.トイレ出入口位置と便器向き関係
読者の皆さんは、トイレに出入する時は、便器を正面から見て入る方がお好みですか、それとも便器サイドから見て入る方がお好みでしょうか?
住設メーカー勤務時代の社内アンケートは、正面からのアプローチより側面から入る方が好きな方が多い結果でした。
また、実際の行動パターンを見てみると、パターン①・③の場合は、中に入り向きを変える為にクルリと180度回転しますが、パターン②・④はジンワリと90度回転するだけで済むようになっています。
若くて健康な方はどちらも簡単な事ですが、足を怪我された時やご高齢になると段々とそれが難しい事となりますので、ご家族の年齢などに配慮する必要があります。
【トイレの価値を高める法則6】
トイレ入口の位置と扉の形態(開戸・引戸・折戸など)は相関関係にあり、使い易さ・ご家族構成・お好みの形態を比較し選択される事が大切です。
【ご参照】
畳1帖サイズのトイレレイアウトパターン例を基本に、入口側間口が狭い便器正面からトイレに入る場合、トイレ周辺の間取りの関係から扉形態は開戸になる例が多くなります。それに反して、トイレのサイドか入る場合(入口側間口が広い)は、引戸と開戸どちらも採用が可能な事例が多くなります。
8.トイレの広さと紙巻器の位置関係
広いスペースは、住まう方の心にゆとりを感じさせますが、ことトイレに関しては、広すぎると困る場合があります。
それは、トイレの便器正面から見た、横幅と紙巻器の位置関係についてです。
ホテルなどの豪華なトイレでは、間口が広すぎると小柄な女性が使い辛いと苦情が発生した事があるそうです。
女性の場合、体格にもよりますが、横幅が1メートルを超えると、紙巻器に手が届かなかったり、紙抑えができずに使い辛くなり、男性でも1メートル10㎝を超えると使い辛くなってきます。
【トイレの価値を高める法則7】
トイレ便器正面側の間口は、紙巻器位置と相関関係にあり、便器中心から紙巻器までの距離は、最大でも50㎝~55㎝程度が使いやすい位置になります。
9.便器からの紙巻器との前後の位置関係
前述のトイレ横幅との関係とは異なり、紙巻器との前後の位置関係も大切です。
座位のままで紙をカットする時は、体に寄りに近すぎても、逆に遠すぎても使い辛く、一般的には、便座の先端から20㎝程離れた位置が紙巻器の中心となるようにレイアウトを検討します。
また、上下の位置は、座位の状態で肘を曲げた高さの床面から平均70㎝前後の高さが使い易い位置となります。
【トイレの価値を高める法則8】
紙巻器の位置は、便座の先端から20㎝程離れた位置が紙巻器の中心となる位置で、高さは床面から平均70㎝前後の高さが使い易い位置となります。
10.化粧鏡と化粧ポーチなどを置ける配慮
さて皆さんのご自宅のトイレに化粧鏡や化粧棚は設置してありますか?
戸建の場合、少なくともパブリック階のトイレに、またマンションの場合、必ずと言って良いほど、「おもてなし」の気遣いで、化粧鏡と化粧棚を設置される事がレストルームクラスのトイレ設計で重要なポイントです。
残念ながら、新築分譲マンションの実態は、デベロッパー様の意向を含め一般的なマンションのトイレには鏡や化粧棚は、設置されていない事例が散見します。
洗面室だけに鏡がある暮らしと、トイレにも鏡などが備わっている暮らしとでは、身繕いやオシャレに対する意識が変化し、日常の暮らしからメリハリある暮らしに変化します。
特に、住まいの中で、一人でこもれる場所のトイレは、利用者を元気づける空間である事も設計の要素として大切にしたいものです。
女性の場合、気心が知れた仲の良い方でも、戸建てやマンションの洗面室を拝借するのは少し気兼ねされる方が多い場合があります。
殆どの方は「お手洗い拝借しますね」の延長で、トイレで化粧直しをされる方が多いのです。
【トイレの価値を高める法則9】
日々の暮らしをメリハリある暮らしに変化させ、ご来客への配慮をしたレストルームクラスのトイレ実現の為に、化粧鏡と化粧棚を設置しましょう。
11.まとめ
今回ご紹介した内容以外で、読者の方々がお知りになりたい情報として、男性の小用時の尿の飛沫対策に関心がある方があるかもしれません。
この情報は、NHK放送の『ためしてガッテン』の2015年9月2日放映で紹介されておりますので、参照されると良いでしょう。
結論から言って、性別に関わらずどのような選択肢を選んでも、完全に排尿時の飛沫を防ぐことは現在のメーカー様と建築の技術を駆使しても無理であることです。
それでも飛沫を抑えたり汚れを軽減する効果はありますので、ご家族とのお話合いの結果から選択肢の優先度を決め実施されると良いでしょう。
今回のブログ投稿は、快適で使いやすいトイレを設計する視点でまとめた基本的設計内容です。今回の基本設計内容に至らないトイレも沢山ありますので、ご注意下さい。
この内容以外にデザインを加味した内容を加えて、初めて皆さんが毎日使用されるトイレが完成します。どちらが欠けても快適なトイレにはなり得ず、機能とデザイン性は常に平衡し検討されることで、快適で素敵な貴方だけのこだわりのトイレ空間が完成することになります。
一つ一つの人間の行為を充分に考慮し、空間と機器を整え、そこで生活される方が心地よくすごせるトイレ。
「たかがトイレですが、されどトイレで深い~話」ではないでしょうか?
~★~☆~ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます。~☆~★~
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